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トワイライト・ファントム13 ~再会~

ザントの過去を割と真剣に考えて、
鬼のように捏造した小説っぽい文章の13話目です。
詳しくは、「トワイライト・ファントム0」をご覧ください。


もしご興味があって時間に余裕があればどうぞ。

◆はじめに
・ザント一人称
・物語はミドナが幼い時代からスタートしていますが
 今回からトワプリにかなり近い時代。
・基本ザンミド意識の展開
※オリジナルキャラが出る回なのでご注意を


◆ざっくりあらすじ
ミドナがザントに別れの挨拶をした

トワイライト・ファントム13
~再会~



「力とは何かね、ザント」


「力、ですか」



小さなチェステーブルを挟んだ向かいに座る影の王。
盤上の駒を歩かせながら、私にそう問いかけた。

王はたびたび、私にこういった概念的なものに対する意見を聞いてくる。

少し考えた後、私は一手指すと同時に口を開いた。


「気力。精神力。根気。能力。実力。力量。」


「ははは!君らしい答えだな!正確だが色気がない」


「……お誉めいただいた、と解釈いたします」


王の側近となって6年が経った。
早いものだ。


救出されてしばらくは、相当慌ただしかった。

ミドナ様との件の真相証言に始まり、黒の塔に関する好奇心からの質問責めの処理、側近という立場での新しい仕事。

塔では外界との接触が全くなかったため、その間起きた出来事や制度といった一般常識に追いつくのも、なかなかの時間を要した。


意外だったのは、王との誓約通りミドナ様の『偽り』を『真実』とした後だった。

ミドナ様に禁術を教えていないという『真実』……。

周囲は私を、黒の塔に『無実の罪』で捕らえられ生還した英雄だ、と言いだしたのだ。


黒の塔を生き延びたことは正直、自画自賛しても釣りがくるほどの偉業と自負しているのだが、よもや世間にまでそのように言われるとは思わなかった。

悪い気分ではない。

以前は目立つことを好まなかったが、ある決心をした後ではその考え方はがらりと変わった。

次の王になるという決心。

王に必要なのは知識や地位だけではない。
人望は最も重要な要素の一つ。

周囲の関心を集め、認めさせなければならない。


周りの様子、自分への評価……そんなことを気にしたことはなかったが、ネイドの言うとおり、私は今まであまりにも他人に無関心すぎた。

これでは上に立つことなど不可能だろう。
それがつまらない妬みを買うようなことであれば、尚更改めなければならない。

同じ轍は踏まない。

私はこの6年間、これまでの自分を省みて、立ち振る舞い方を考え直し、改めるようにした。

自分で言うのも何だが、かなりの無理をしたように思う。
今までしなかったことが、急にできるようになるはずがない。 


だが諦めるわけにはいかなかった。


その甲斐あって、今では多くの者と関わり、良い関係を築き上げている。
他の権力者と前向きな話も、胸糞の悪い話もした。


今の状況が煩わしくないと言えば嘘になる。


しかし、全ては『統べる者』になり、求めるものを手にする為……。

その為なら何でもしてやる。
ミドナ様の計らいを無駄にはしない……。


「ザント、君は何か動物を飼ったことはあるかね」

「は……?いえ、ありませんが」


王のあまりに唐突な質問に一瞬頭が追いつかなかったが、私は事実を答えた。


「そうか。では獣を飼うのに必要な行為は、君の辞書にはなんと書かれているかね」

「……まぁ……餌やりだとか……寝床の用意だとか、ですかね」

「うむ、そうだな。
ではその獣がとんでもなく凶暴で、餌も食べなければ言うことも聞かない、用意した寝床は荒らし、開いた瞳孔でこちらを睨み、鋭い牙で今にも襲いかかりそうな場合、どうすればいいかね」

「……鎖で繋いでおきます」

「ふむ、それも一つの手ではあるな。
しかしそれは万全な策ではないね、獣は賢く獰猛だ。鎖もいつ引きちぎられるかわからんぞ」

「……難しいですね。
無理矢理ねじ伏せるしかないですかね。正直お手上げです」

「うむ。では答え合わせをしよう。
最も安全で確実な方法はな、獣を手懐けることだよ」


王があまりにも捻りのないもっともなことを言うので、拍子抜けしてしまった。


「…………まぁ……そうでしょうな」

「ははは、腑に落ちない顔をしているな。
しかしだなザント、これはとても大事なことだぞ。
力ずくで屈服させることもできるが、それではいけない。
獣は大人しくしているように見えるが、いつ首根に噛みついてやろうか、頃合いを窺っていることだろう」


王は自らの顎を撫でながら駒を動かした後、私に向き直った。


「必要なのはその獣の危険性を理解し、受け入れ、手懐けることだ。
手懐ける方法を知っていれば鎖など必要ない」


獣を理解し、手懐ける……。


「強い獣に臆してはいけない。屈してはいけない。魅入られてはいけない。
獣の恐ろしさを理解しなければ、立場が逆転するのは時間の問題だ。
従えるつもりがいつの間にか自分が支配されてしまうのだよ」

「…………」

「こちらが獣をよく知っていれば、武器など持たなくていい。素手で十分だ。優しく撫でてやるだけでいい」


王はまるでそこに獣がいるかのように、撫でる手振りをした。


「受け入れる優しさ、歩み寄る優しさ。
力を持つ者も持たぬ者も相手にさしのべるべきは『手』。
それが念頭にあれば、おのずと我々の力の使い方は変わってくると思わないかね」


「……」


「力とは優しさ。
余の思う力とはそこにある」


……優しさ。
…………。

私はおもむろに口を開いた。


「蒙が啓かれるような思いです陛下。
ただ、今はその全てを理解できる経験が私にはありません。
今後それがあると良いのですが」


「あるさザント。君が望めばな」



優しさ、とはな……

なるほど。

なんとまぁ
相も変わらず陛下はつまらない考えをお持ちだ。


一生理解しえないだろう。




力は優しさなどではない。
優しさなど振りまいたところで相手はつけあがるだけだ。


力とは権利。


強ければ強いほど
周囲を動かす権利がある。

持たぬ者は流れ
持つ者は操る

それで秩序が成り立つのだ

優しさなど腑抜けた恩情は権利の前には無意味。

獣も同様だ。

獣ごときが、力無き者が、力のある者にたてつくなどもってのほか……


今の影の世界は
偽りの優しさなどで統治しようとし
欲望を覆い隠し見て見ぬふりをしている

優しさなど表面的なものにすぎない。

だから、汚れた本質が裏で蠢くのだ

淀みの中を這う蛆虫のような
吐き気をもよおすヒトの性

穢らわしいものを隠して何が優しさだ。
くだらない
何の解決も進展もない

現に一族の魔力は減る一方ではないか。


力のある者がそうでない者に歩み寄ろうものなら、全体のレベルは下がるばかり

獣に襲われるような奴は結局その程度の力ということ。


力を持ちながら、自分の持つ権利に気づかなかったからこそ、私はあの塔に囚われたのだ

もうごめんだ……そんなことは


変えてやる……
私が影の世界を

優れた者が『動かす権利』を持つ世界
優れた者だけが前へ進むことを許される世界

そう、
力を持つ者が持たざる者を支配する世界

それがこの地に落とされた、我々一族のあるべき姿

力を持つ者が汚れた塔に、このような陰りの地に、追いやられることが二度とないように!


私が変えてやる……!


「ザント。百獣の頂点である獅子王も、百獣がいなければ王ではないのだよ。 チェック」

「あ」

「くく!これは余の勝ちだなザント!」

「あぁ……」


しまった、王との勝負は気を抜くことを許さないのだが、あぁ、他のことを考えすぎた。

私のキングは逃げ場を失っていた。
完全に私の負けだ。


ぐ……


「……参りました」

「くくく、これで負けた分取り戻したな!どうする?もう一戦やるか?」

「いえ、少し現場の様子を見てこようと思います」

「そうか、残念だ……。いや、そうだな。祝いの時はもうじきだ。何かあれば教えてくれ」

「は」


私は席を立ち、王に一礼して部屋を後にした。




普段は薄暗い廊下も、今だけは明るく賑やかだ。
宮殿内はいつにも増して忙しなかった。


明日

ミドナ様が帰る。


6年間の影送りを終え、戻ってくる。
そしてそのまま、宮殿を上げての祝祭が催される。


宮殿はひと月も前からその準備に明け暮れていた。
祝祭は、ある男曰く『一日中らんちき騒ぎを繰り返す楽しい嬉しいお祭りって感じだよきっと』だそうだが。

……


浮かれ沸き立つ家臣たちとは対照的に、私の気持ちは沈んでいくばかりだった。

ミドナ様にもうすぐ会える。

そう思う度に、どういうわけか。



「おおザント様、来ていただけるとは!」

「ご報告いたしますザント様!」

「こちらは順調です」

「私の方も問題ありません!」

「私の管轄ももうじき終わります」

「手配したものが少し遅れているようですが、明日には間に合うかと」


準備に一層精を出す責任者たちが、私の元に駆け寄り次々に進捗を告げていった。


「そうか。問題はなさそうだな」


私はそれぞれの目を見ながらゆっくり頷く。


「祝祭の準備は困難の連続だったはずだ。
だが皆、ここまで投げ出さずによくやってくれた。誰一人欠けても成し得なかっただろう。
ミドナ様もきっと喜んでくださるはずだ。
もう一息だ、最後まで頑張ってほしい」


労いの言葉をすらすら言えるようになったのも、昔の私では考えられなかったことだ。


彼らの意気込みを感じる力強い返事にもう一度頷く。
あとで差し入れなど持ってこさせると約束し、私はその場を離れた。


大広間を歩いていると、ふと広間の中心に座り込んで作業をしている青年が目に入った。

青年の周りには色とりどりの淡い輝きを放つランプがいくつも浮かんでおり、一帯を幻想的な空間に変えていた。


私は青年に近づき、話しかけた。


「作ったのは君か」

「あっザント様!はい、僕です」

「なかなか上手いではないか」

「いえ全然……!これなんか、バランスが悪いと思いませんか?何回魔力を使っても上手く行かないんです」


青年はランプを一つ持ち上げた。
確かにそのランプは光の強さに偏りがあり、色もまだらで何色なのか説明しづらい、お世辞にも上出来とは言えない仕上がりだった。


「そうだな……君の利き手は左だな」

「え!よくわかりますね!」

「魔力のバランスが偏るのはよくあることだ。どうしても利き手側の方が魔力は強くなる。魔術を普段からよく使用している者なら尚更だ。君はよく練習しているようだな」

「それほどでも……えへへ」


青年は照れくさそうに頭を掻いた。


「水盆をイメージをするといい。どちらかに傾けばすぐにこぼれてしまう量が入っている。中身をこぼしてしまわないよう、水平を保ちながら持つ姿を思い浮かべてやってみたまえ」

「なるほどですね!やってみます!」


青年はすぐにランプに向き直り、魔力を注ぎ始めた。
ランプは次第にぼんやりと輝きはじめ、青く澄んだ色に染まっていった。
先ほどより良い仕上がりだ。


「!!わあっできましたよ!すごい!さすがですザント様!ありがとうございます!」

「なに」

「今の感覚を忘れないようにしないと……」


青年は満面の笑みで感謝を述べ、すぐに次のランプにとりかかった。

魔術や魔力の扱いに貪欲な男だ。
とても良いこと。
一族にこの青年のような者がもっと増えればいいのだが。


「これ、宮殿の入り口に飾るものなんです……戻ってきたミドナ様が一番最初に見るものですから」

「!」

「だから僕、いいものを作りたいんです!ミドナ様に喜んでもらいたいんです!あわよくば褒めていただけたら嬉しいなぁー……などと思っておりまして」


……。


「……そうか。……頑張ってくれ」

「はい!ありがとうございます!」


……


思わず出そうになったため息を堪える。


明日は待ちに待った、ミドナ様に会える日。
実に9年ぶりとなる。

あれだけ求めた、私の光。
黒の塔でも、側近になってからも、どんな辛い目にあっても、いくら苦しい思いをしても、いつか会える日が訪れることを希望にしてきた。

それが明日だ。
こんなに幸福なことはあるまい。

なのに。
私の心は晴れない。

嬉しいはずなのに、ちっとも喜ばしい気持ちになれない。

何故…?


会いたいのに、会いたくないのだ。




……


『あわよくば褒めていただけたら嬉しいなー……などと思っておりまして』


……


『ザント……』


『オマエ……エライな……』


『偉いな、ザント』





……


「あれ、ザント様、どうかされましたか?ずいぶんと顔色が悪いようですが……」
 

青年が心配そうに私に声をかけた。


「む……」


「ザント様お疲れでしょう、どうかお休みになられてください。僕ならもう大丈夫です」


「……そうさせてもらおう」


「ご無理をなさらないでくださいねザント様……僕、その……」


「ありがとう」


よほど顔色が悪いらしい。
青年は泣きそうな顔で私に気づかいの言葉をかけた。


悪いがもうこいつとは話したくなかった。



『ミドナ様に喜んでもらいたいんです!』

『あわよくば褒めていただけたら嬉しいなぁー……などと思っておりまして』



褒めてもらえたら……だと?


……ばかばかしい……


お前のような魔力のコントロールもろくにできない男にミドナ様が関心を寄せるはずがない……


寄せるはずが……


…………


気づけば爪が食い込むほど手を強く握りしめていた。
魔力が無意識に溢れ出ている。

とげとげしい力だ。
これでは触れただけで……


大広間を離れる私の背後で、ランプが一つ、いや二つほど割れた音が聞こえた。




私は宮殿の外へ出た。
外は外で、家臣たちがあちこちを行き来している。
どこも準備で忙しそうだ。


そんな家臣たちを後目に、私は敷地内の隅に足を運ぶ。

一人になりたい。

崖の上、最も落ち着く場所……

目の前に広がる大空で、黒雲が形を変えながら次から次へと流れていく。
黄昏の光が寂しげに影を揺らす。
前髪が風でさやさやとなびく。

私は腕を組み、深く息を吐いた。


ミドナ様。


かつて……ここで私は影の一族の危機について、ミドナ様に打ち明けたことがあった。

いまだにあの話は誰にもしていない。


あの時ミドナ様は私の隣に座っていた。
透き通った赤い瞳で真剣に私を見つめていた。


私を理解してくれた。

私を認めてくれた。


一人で思い悩み、抱え込むしかなかった私に

『偉い』と、そう言ってくれた。


……唯一……




『偉いな、ザント』




今の私をミドナ様はどう思うだろうか。
今のミドナ様はどう変わっただろうか。


『偉いな、ザント』


私の一番新しい記憶のミドナ様から、9年もたっているのだ。

それも……


『もういい』


私とミドナ様の時間は、辛い記憶で止まっている。

あのまま、あれがまだ続いた状態なのだろうか。

ミドナ様が私から逃げ、私もまたミドナ様から逃げた、あの状態が。

……


私は怖いのかもしれない。
ミドナ様に会うのが。



そうだ。
怖いのだ。

誰よりも、長い間、9年間も、
会いたいと願っていたのに、

会うのが怖いのだ。


何を話せばいいのかわからない。

どのような顔で向かい合えばいいのかわからない。

不安しかない。

胸が詰まる。

息が苦しい。


……

わ……

私がこんなに苦しんでいるのに

あいつは、あんなに、
む、無邪気に、
あ、あ、ああ会えることを喜んで、

私を差し置いて心を踊らせ、

あわよくば、
あわよくば、

ほ、ほめてもらおうなど!

くそ、

くそ、くそ、くそ!


こんなにも……!

こんなにも、苦しいというのに……!


……ああ


それでも


それでも会いたい……


ミドナ様……
私の光……



開いた手で顔を覆う。
暗闇を見つめる。
辛いものが見えないように。


ミドナ様……





「ふー!ついたついた」

「!」


私の背後で女の声がした。


あぁくそ!
祝祭の準備をしている今!
一人で落ち着ける場所などないのか!


「クククッみんなビックリするぜ!」

「だ、大丈夫でしょうか……皆様には明日とお伝えしているんですよね?」

「当たり前だろ!そうしないとサプライズにならないじゃないか」

「あぁ、お、怒られないといいのですが…」

「大丈夫だって!心配症だなニコルは!」


……?

ニコル?


私が後ろを振り返ると、少し離れた場所に女が二人立っていた。
物陰に隠れ、宮殿の様子を伺っている。


片方は紛れもなくミドナ様の侍女、ニコル殿。

懐かしい!
ニコル殿の顔を見たのは9年ぶりだ。

その横顔は、私の知っている姿よりもずいぶんと……そう、端麗な印象を受けた。


しかしニコル殿がいるのは何故なのか。
ニコル殿は影送りに向かったミドナ様のお付きとして同行したはずだ。

先に使いとして戻ってきたのだろうか。
では、もう一人は誰だ?


「ずっと考えてたんだけどさ、やっぱりハデに登場してワーッと湧かすのがいいよな」

「あ、あんまりやりすぎると驚いて倒れてしまうのでは……」

「倒れたら起こせばいいよ!じゃ、もうちょい近づいたらイチニノサンで行こうな」

「うぅ、怒られるだろうなぁ……」

「サプライズだからな、バレないようにしない……と……」


キョロキョロと辺りを見回すその女は、背後の私に気づいてしまった。

目が合う。

お互い石のように固まり、奇妙な拮抗状態が続いた。


誰だ……?


私が不審な目を向けると、その女は血相を変えながらものすごい速さでこちらに近づいて来て、食いかかるように胸ぐらを掴んできた。


「おい!オマエ!!」

「ひっ」


あまりの勢いに情けない声を上げてしまう。


「ワタシ達がここにいること絶っっっっ対誰にも言うんじゃないぞ!!!ワタシ達はサプライズなんだよ!!!」

「何をわけのわからないことを……!て、手を離せ無礼者!」

「おうオマエこそ無礼者だぜ!ワタシが誰だかわかってるのか!?オイ!」


そう、誰なのだ?
この女は。

背は私より頭一つ分ほど低いが、胸ぐらを掴むその力は異様に強く、口調も乱暴だ。
そういう意味ではあまり女らしくない。


「あれ……」


燃えるような橙の長い髪、宝石のような赤い瞳。

あぁ、どこかで、知っている。
この感じは……


「オマエ……もしかしてザント……か?」

「!!!」


私は、自分の名を呼ぶ見知らぬ女を凝視した。
いや、見知らぬということは、ない。
知っている。
私はこの女……この方を知っている。


私が長く求め続けた、私の……
私の光……


「ミドナ様……ですか?」


「ワーーーッ!!マジかよ!ザント?うわっザントか?本物だ、動いてら!アハハハハ」

「な、な、な、何故、あ、あ、あ」


胸ぐらを掴まれたまま私はミドナ様に体
を揺すぶられ、肩をバシバシと叩かれる。
事態に頭が追いつかない。


「な、何故ここにいるのですか、明日帰るハズでは」

「クククッだからサプライズだってば。みんなビックリするだろきっと!」

「……ビ、ビックリ??」

「そ!ほんとは今日が戻る日だったけど、手紙では明日帰るように伝えてたんだ。6年ぶりだからな、面白楽しい登場をしないとな」

「面白楽しい……」

「ま、色々話したいことあるけど、今忙しいからまた今度な、ザント。とりあえずワタシ達のことは誰にも言うなよ!」

「……」


ミドナ様はパッと急に手を離し、宮殿へ向かって去っていった。

呆然とする私に、ニコル殿が己の髪を梳きながらおずおずと近寄る。


「あの、ザント様……」

「ニコル殿」

「あの、あぁ……ご無事でよかったです……」


ニコルはいつもの、いや、今となっては懐かしい、ふんわりとした表情で話しかけた。


「あなたこそ」


私も軽く微笑み返す。


「!!あ、えっと!あわわ……」


慌てふためくニコル殿を見るのも何やら久しぶりだ。


「あぁっ、お、お会いできて本当に嬉しいです……!しばらく見ない間に、その、とても素敵になられ……あぁっ、な、何でもないです!
えっと、ご、ごめんなさい、私も行かないと……またお時間くださいね」

「ええ」


ニコル殿はぺこりと一礼すると、遠くで待つミドナ様の元へ駆けていった。


……
あぁ、何たること……


私は二人を見送ると、深く息を吐いた。
いや、吐かざるを得なかった。


あれが?
あれがミドナ様?
あの、あの人がミドナ様?
私の記憶の、9年後の姿?

あれが私の光……??


何たること……


心臓が高鳴る。
これは、体を揺すぶられていたからか?
それとも、それとも、あぁ、


顔が熱い。
凄まじい脱力感。


何たること。
何たること……。


あんなに会うのを渋っていたのに。
会うのが怖かったのに。

そんなことを考える暇もなく、
私は、もう、

ミドナ様のことで頭がいっぱいになっていた。

何だこれは。

私はまともか?
いや、まともではない。
おかしい。
完全におかしい。

ミドナ様はもう立ち去ったというのに、今更自分の身なりを整えている。
袖が破けたり、靴が傷ついていないか点検している。
髪など梳いたり、ありもしない埃を叩いたりしているのだ。

まともではない。

疾走感のある再会だった。
会った途端にまた別れた。
ミドナ様をこの目で見た時間は一分も満たない。
しかしその姿は強烈に網膜に焼き付いていた。

鮮明に浮かぶ。
ミドナ様の姿。

燃えるような橙の髪はしなやかに伸ばされ、黄昏の光を淡く反射していた。
あの髪に触れたら、指の間を水のようにすり抜けてしまうだろう。

宝石のような赤い瞳はよりいっそう、深みを増していた。
吸い込まれそうな奥行き。
あの瞳に見つめられたら、目を逸らすことは叶わないだろう。

身の丈はとても高くなった。
9年前はまだ私の腰ほどの高さだったというのに。
今は私と頭一つ分しか変わらない。
私と話すときは、きっと少し見上げるのだろう。

大人びた凛々しい顔つき。
しかし幼い頃の茶目のある面影はどこか健在しており、目を細め、歯を見せるいたずらめいた笑い方をするところは全く変わっていなかった。

ミドナ様は大きくなられた。
私の知っているミドナ様とは違う、しかし確実に私の知っているミドナ様なのだ。


思い出すだけで重く締めつけられるような胸の痛みを感じる。
呼吸がぎこちなく、不規則で、ただただ息苦しい。
喉に何か熱いものがつかえているような、奇妙な感覚……。

だが、
会う前のあの苦しさとは全く違って……

妙な幸福感があった。
想うだけで目の前が明るいのだ。

息苦しいのに幸福だと。
わけがわからない。

おかしい。
とてもまともではない。


私はどうかしている……

……

……


……ミドナ様……




とても、美しく、なられた……




ていうね(白目)

今回から後編です。
ようやくザントとミドナが会話できました。
あーよかった()

やはりアクセス解析を見ているとザンミドで検索して訪れてくれる方が多いので、
ここ最近のザンミド的要素の少なさには申し訳なく思っておりました。
後編はザンミド要素がメインになる予定です。

ザンミドといってもらぶらぶ(禿)描写はまったくないので
甘いのをお求めの方にはやはり物足りないかもしれませんが、
私は同じ画面に存在するだけでザンミドザンミド言ってしまう判断基準を持っているので、
ザントとミドナが会話しただけでノルマクリアとか考えているスタイルにお許しをいただければと切にお願いしたいところです。

という長い言い訳。
ほんとは恥ずかしいだけです。
誰か代わりに書いて。(切に)

◆勝手に出した用語や設定の解説
・側近
今のザントの役職。
黒の塔から救出されたザントに王が直々に任命しました。

これはトワプリ公式漫画でザントを側近と言っていたので、公式設定とさせていただきます。

なのですが「ウヒー側近の仕事って何なんじゃろ(^m^)」とか思いながら、思っただけでろくに調べず書き進めてしまったので、さすがにいかんなと思ってちょっと調べました。

側近と呼ばれるのは主に宮中顧問官と呼ばれる役職みたいですね。
宮中顧問官は政策に対して意見を述べたり公的な取り次ぎをしたりする役割らしいです。
ザントもそんな感じのお仕事してると思ってもらえればいいと思います。
(ほんとは宮中顧問官になるには色々条件があるらしいですが気にするな!必死なんです)
ただ、ザントは相変わらず誰よりも魔術に詳しいので、そっち周りのトップでもあるかと思います。


・ザントと王
関係はそれなりに良好です。
チェスの腕は五分五分。接待プレーしない程度には腹を割ってる感じ。
側近はザントだけではないのですが、王はザントを特に側に置くようにしているようです。
ザントはというと、表には出しませんが王のことは全く信頼していません。


・ザントの評判
かなり良いです。
ザントは王候補として名前が上がるレベルには周囲の支持を集めているはずです。
またそれは、ザントが自分が次の王と確信していることも裏付けとなっています。
しかも王に選ばれなかった理由を終盤ミドナに明かされて初めて気づくっていう。

いくらザントでも誰からも認められてないのに自分が次の王とか思うほど傲慢ではないと思います。傲慢だけど。
のでザントにもちゃんと人望があるんだよ的なシーンを散らしてみました。
でも中身までは爽やかになりきれていないようです。


・ニコルその5
オリジナルキャラです。ミドナと一番仲良しの侍女。
ミドナの影送りに唯一追従が許された人物です。
きれいな人。ザントを好き。
ザントが昔より社交的になってたのでビビったもよう。



やれ「会いたい」だの……
「やっぱり会いたくない」だの……
「結局会いたい」だの……
会長も怒り出すレベル。

怒りだすレベルなので圧倒的ザンミドくださいお願いします(ざわざわ)


トワイライト・ファントム0

トワイライト・ファントム1 〜黄昏の小さな姫君〜
トワイライト・ファントム2 〜隠者の庭〜
トワイライト・ファントム3 〜聖者〜
トワイライト・ファントム4 〜潜思〜
トワイライト・ファントム5 〜黄昏の哀歌〜
トワイライト・ファントム6 〜忠誠と反故〜
トワイライト・ファントム6.5 〜後ろ影〜

トワイライト・ファントム7 〜影と静寂の中で〜
トワイライト・ファントム8 〜塔と腕輪〜
トワイライト・ファントム9 〜禁戒の呪術〜
トワイライト・ファントム10 〜光〜
トワイライト・ファントム11 〜黒の賢者〜
トワイライト・ファントム12 〜残された者たち〜
トワイライト・ファントム12.5 〜蝶むすび〜

トワイライト・ファントム13 〜再会〜※ここです


◆タグ一覧
/トワイライト・ファントム

拍手

3 Comment

無題

おおおおおおお!!!
ミドナさんが帰ってきましたね!
そして胸を踊らせるザント…
可愛いです可愛いです非っっっっっ常に!
9年前にあまりにも辛い別れをした二人だったので、まさかこんな形で再開できるとは……!
大好きです、ザントもミドナもそして何よりも
ザンミドが大好きになりました!
後半も期待しています!
Re:無題
  • おゆ
  • (2016/06/27 08:43)
コメントありがとうございます!

ずいぶんと遅くなりましたが、ようやく会えました!((´w`))
突然の出会いとはいえ、ミドナは明るく振る舞うだろうなと思ってあんな感じです。
ザントはそんな成長したミドナにドッキドキです。
可愛く感じていただけてよかったですへへへ()

そして!ザントもミドナもザンミドもより好きになっていただけたならこれ以上のことはありません……!!うわあああああ
とても嬉しいです!!!ありがとうございます(↑w↑)

後編は楽しいパートとそうでないパートがハッキリ出ると思うのですが……ここまで書いたからにはしっかり終わらせたいので……頑張ります!(>_<)

無題

ギャァァァァァァ
ザンミドォォォォォォ
コホン…失礼しました。
ザントさん…それは恋ですよ。
と教えてあげたいで
Re:無題
  • おゆ
  • (2016/07/03 22:06)
ギャァァァァァァ
ザンミドでぇぇぇぇぇす!!!
恋ですかね!恋なんですかね!恋なんでしょうね!
教えてやりましょうぜ!!()

ザントとミドナの会話はずっっと書きたかったシーンなので、ようやく叶ってよかったです~((´w`))

無題

はわわわわ…ミ、ミドナが、ザントと会話している…!!(歓喜)

社交的になってもやっぱり黒いザントさん良いですね!
やっとミドナに会えてhappyなザントさんですが、情緒不安定にならないか心配ですw

いやぁすっごく2828しながら読ませて頂きました!
あと、ザントの爽やかスマイルを受けてあわてふためくニコルさんがちょっと可愛いなと思いました。
Re:無題
  • おゆ
  • (2016/07/03 22:11)
2828されましたか、何よりです、ありがとうございますw
ほああああミドナとザントが会話してるとテンション上がりますよね……!
私も書きながら一人で歓喜しておりました。

これまでどれだけ無愛想だったんだって感じですが、ザント本人は相当喋るようになったみたいです。
でも中身は陰湿です。残念っ!(^m^)

二人の将来のことを考えれば不穏なことになるに違いないのですが、これまで耐えた分それなりにいい思いをしてもらいたいところです((´w`))


ニコルさん可愛いですか、ありがとうございます><
ザントモテろ!!という願望のもと生まれたキャラなので役回り的には正しいリアクションさせられてよかったです(^o^)

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