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トワイライト・ファントム12.5 ~蝶むすび~

ザントの過去を割と真剣に考えて、
鬼のように捏造した小説っぽい文章の12.5話目です。
詳しくは、「トワイライト・ファントム0」をご覧ください。


もしご興味があって時間に余裕があればどうぞ。

◆はじめに
・ザントではなく、ミドナ視点の回
・物語はミドナが幼い時代からスタート。
 ザントも若くて、いくらかまともっぽかったけど最近微妙。
・基本ザンミド意識の展開


◆ざっくりあらすじ
ザントは次期王になろうと決めた

トワイライト・ファントム12.5
~蝶むすび~



「ごめんなさい、ごめんなざい、おどうざま……っ!」


ワタシがお父様に泣きながら謝ったのは、これで2回目だ。


一度目は、3年前ーー





「ザントはいつ戻るんだ?」


それを大臣達に聞く事もしなくなった頃だ。
答えがいつも『わたしにはわかりかねます』の一点張りだから、聞いても意味ないと思って。


ザント。


ちっとも連絡がないまま何週間もたっている。


北の神殿に出向いたって聞いたけど、そんなに時間かかる用事なのか?

そもそも!

ワタシに断りもなく、授業ほっぽりだして勝手にいなくなったことが許せない。

それにあんな、なんか変な別れ方したまま会えないのは、なんとなく気分悪いし……!


もう我慢ならない。


ワタシはこっそり宮殿を抜け出した。
一人で北の神殿に行こうと思ったんだ。


もちろんアイツに会いに……いや一発ぶん殴りに行くために。




「っ!!」

神殿への長い道のりの途中、ワタシは突然魔物に襲われた。


「くそっ!あっち行け!!ぶっ飛ばすぞ!!」


宮殿の外にあんまり出たことがなかったワタシは、魔物があんなに凶暴で恐ろしいものだって知らなかった。
出くわしても魔術で対抗できるって思ってた。

でもそんなに甘くなかった。


魔物に返り討ちにされる……!


「うわぁあああああっ!!」

「ミドナ!」


死ぬ!って本気でそう思ったけど、間一髪のところでお父様が助けに来てくれたんだ。


「お父様……」


強い魔術で魔物を撃退したお父様の顔は、すごく怖かった。


お父様カンカンだ……。
ワタシはビクビクしながら身構えた。
 

だけどお父様は、
そのままワタシを抱きしめて、わんわん泣き出した。

あのお父様が泣くなんて。
怒られると思ってたから最初はビックリしたけど……。
その時ワタシは、自分勝手な行動がお父様をどれだけ心配させてしまったか、ようやく気がついた。

本当にいけないことをしてしまった、そんな気持ちが湧き上がった。


「ごめんなさい、ごめんなざい、おどうざま……ごめ……」


ぼろぼろ涙が出てきて、呂律もままならないまま、お父様にたくさん謝った……。




その後、お父様はザントの捜索隊を結成してくれた。


捜索隊は本格的にあちこちを捜し回った。
ザントが向かった北の神殿にも、ワタシの代わりに行ってきてくれた。


でも結果は……見つからなかった。
手がかりすらない。
神殿にもそもそも着いていなかったらしい。


最悪の見解は『途中で魔物に』って感じだったけど、ワタシはどこか納得できなくて、諦めきれなかった。


でも、もう勝手に捜しに行ったりはしない。


根拠はないけど、アイツはもちろん生きていて、いつかひょっこり帰ってくるような気がしてた。


だからその日まで、一生懸命、勉強しようと決めた。


本を読んで、研究して、練習する。
アイツみたいにそうしよう。


禁術の練習もこっそり続けよう。
アイツが使ってた防衛関係の魔術も色々勉強して、一人で練習できる環境を作ろう。


魔術以外の授業も、もうさぼらない。
これまで以上に必死に勉強しよう。


……アイツがいつ帰ってくるかわからないけど、でも戻ってきたら、きっとまた魔術の授業を教えてくれるはずだ。


今のワタシには、聞きたいことがたくさんあるんだ。

もう少し難しい本が読めるようになりたいんだ。


帰ってきたアイツがガッカリしないように。

アイツに少しでも近づけるように。


いつか、
『よく頑張りましたね』って言ってもらえるようにーー







そんな風に過ごしてたな。
あれからもう3年も経ったのか。

あっという間だ……。




ワタシは一週間後、誕生日を迎える。
それは同時に、影送りの日を迎えることにもなる。

影送りは、王家の子が宮殿から遠く離れた神殿に行くっていう、古くからの習わし。
決まった歳になったら、有無を言わさず絶対に行かなきゃならない。

そこで立派なオトナになるために勉強してこいってさ。


あーあ。
ワタシの誕生日なんていったら、それはもう豪勢で。
生誕の祝日って名前がついてるくらいで。
毎年みんなでウワーッと盛大に祝ってくれるのに 、影送りの日だけはそれもなくて、代わりに神殿でミソギの儀式とかいうのをするらしい。


……
つまんなそ……。


具体的に何をするのかわからないけど、名前からして退屈そうだ。


それに神殿に行けば、6年経つまで宮殿には帰れない。
その間はお父様にも、大臣達にも、家臣のみんなにも会うことはできない。


変な決まり。
いいじゃん一回くらい帰ったってさ。


お付きにニコルが来てくれるのは嬉しいけど……



ザント



行く前にアイツに会いたかったな。
結局3年も帰ってこないなんて。


3年……


最悪のケース、だけは絶対に考えないようにしてたけど。
心の隅に、変なもやもやだけは常にあった。



ワタシは宮殿の一番隅にあたる、崖の淵に座っていた。

影の霧をすくい上げ、息を吹いてふわっと飛ばす。
霧はたちまち蝶に変わっていって、きらきら輝きながら黄昏の空を飛んでいった。

一匹や二匹じゃなく、たくさん。
それも、昔よりずっと長く維持できるようになった。


「おいザント、上手いもんだろ。見たらビックリするぞ」


蝶の群れを眺めて、ワタシは呟いた。



その直後



「!!!!!??」


ズンという地鳴りがして、空気が震えた。


「な、何だ……!?」


冷や汗が出る。
胸がドキドキする。
鳥肌がたつ。
息が苦しい。


なんか変だ!


ワタシは宮殿に向かって全速力で走った。
空気が張り詰めてる。
鋭い風に肌がピリピリと痛んだ。


普段は黄昏色の空が、緑や黒にチカチカと点滅している。
ありえない色に染まった空は、すごく不気味だった。


ワタシが本殿の入り口にたどり着くと、そこでは家臣達がもみくちゃに群がっていて、大騒ぎのパニック状態になっていた。
あちこちで叫び声が、ひっきりなしに飛び交っている。


「何だ!?何が起きているんだ?」

「外はどうなってる!?」

「そこをどけ、私が見てくるっ」


状況を見に行こうとしてるヤツ……


「ひええ空が……!この世の終わりだぁ!」

「早く逃げるんだ!!」

「どけよ!入れないだろう!」

「や、やめろ!押すんじゃない!」


必死に宮殿内に避難しようとしてるヤツ……


ぶつかりあって、
怒鳴りあって、
悲鳴をあげて。 


……みんな……


影の世界はいつだって穏やかで、いつだって平和だ……
だから、妙な出来事や変化に慣れていないんだ……
みんな不安なんだ……


……
ワタシだって不安だ。



だけど、ワタシがそんな事でどうするんだ。
ワタシはこの宮殿の姫君だぞ!
『なんか』あった時は、ワタシがみんなを守らないと……!


くそ……!


ワタシは震える足をぴしゃりと叩くと、そのまま大騒ぎするみんなのところへ歩み寄った。
誰もワタシに気づいていない。

左手を前に出す。
大きく深呼吸。

よし。


左手から魔力を練り上げ、影のオーブを作り出す。
少し軽めに、なるべく小さく。
オーブがちょうどいい大きさになったところでワタシはそれを高く上げて、右手で思いきりはたき落とした。

オーブは地面にぶつかって破裂する。
パアンと大きな音がけたたましく鳴り響いた。


「!!!?」


驚いたみんなは、音の発信源を探してキョロキョロと辺りを見回した。
すかさずワタシは大声を上げる。


「大丈夫だ!みんな落ち着け!」


ワタシが叫ぶと、みんなはハッとこっちを向いた。


「大丈夫だ、世界の終わりなんかじゃないよ。落ち着こう。な」


ワタシは魔力を使って金平糖のような小さな光をいくつも作りあげた。

光は焼いた木の実みたいに、パチパチ弾けて飛び回っている。


「ほら、花火ならワタシだって作れるぜ?
あんなのコレのでっかい版みたいなもんだよ。新年祭の花火の方がよっぽどドキドキするだろ?」


みんなはぽかんと口を開けたまま、ワタシを見ている。

それでもワタシは続けた。


「でも……何か妙だからさ、ワタシが様子見てくるよ。だからみんなは宮殿の中に戻って、安全なところにいてくれるかな」


ワタシは精一杯、いつもの笑顔を作りながら、

「大丈夫さ」

と一言付け加えた。



それでも不安が拭いきれないのか、みんな困惑の表情で、たじろぐだけだった。


やっぱ、きついか……。


そんな中、


「ほらほら、俺たちが騒いでも何も解決しないだろ?ミドナ様に余計な心配かけさせるんじゃないよ!中入っとけ中!」

「!ナハト」


ワタシの意図を組んでくれたのか、家臣の一人ナハトが声を上げてくれた。


「ここは俺に任せてくださいミドナ様」

「!ありがとうナハト……!」


ナハトは「ご立派でした」と言ってウインクすると、みんなを(半ば強引に)宮殿に押し込んでいく。


よかった……。


「ミドナ様!」

「ミドナ様一人にお任せすることなどできません」

「我々も協力いたします!」

「!みんな……!」


居合わせた衛兵たちがワタシの周りに集まってきてくれた。
正直ちょっと心細かったから、素直に嬉しい。


ワタシは唇を固く結び、深く頷いた。


「みんなありがとう!
そしたらオマエ達はソルの様子を見てきてくれ、そのまま警備も頼む!」

衛兵たちは返事をすると、サッと行動に移った。


「それからオマエ達はワタシについて来てくれ、一緒に原因を探ろう」


ワタシは残った衛兵と一緒に、この違和感の元凶を探りに向かった。



何となく、妙な気配のする方角はわかる。
その感覚を道標に、ワタシ達は足を進めた。


それにしても何なんだ……寒気がする。


よくわかんないけどすごく不安で、悲しくて、苦しくて、腹が立って……色んな気持ちがごちゃ混ぜになって体の中を巡っていく。


おかしくなりそうだ……


感覚に従って西の広場までやって来ると、何人かの家臣が集まって騒がしくしていた。
ワタシはそこに駆け寄った。

「どうした、大丈夫か!?」

「ミドナ様!」

「あ、あれを……!!」

指さした方向を見ると、 遠くで緑の光と黒い光が渦を巻きながらギラギラと輝いていた。

この不気味な色をした空の原因だ。

緑の光は魔力の色で見慣れているけど、黒い光なんて初めて見た。
なんだか周囲を飲み込んでしまいそうな、黄昏の黒雲とはまったく違う、あまりにも暗くてどす黒い光。

二つの光が強く瞬く度に、肌がびりびり痺れる……


「あの光は黒の塔から溢れているようです」

「黒の塔……?あそこは閉鎖されてるハズだろ?」

「わかりませぬが……あの黒い光は呪われた魔力の塊です。
二つの魔力が絡み合って暴走を起こしているようです。なんと禍々しい……」

「呪われた魔力に……暴走……?」

「あっ!く、崩れたぞ!!」

「!」


光が爆発し、黒の塔はうなり声を上げて崩れていった。
厳つくそびえ立っていた塔は、その背丈をどんどん縮めていく。
周りにすごい塵が舞い上がって、光も消えて、とうとう見えなくなってしまった。


わけがわからない。
黒の塔には誰もいないはずだ……
魔力の暴走って、どうして……


みんな同じ気持ちだろう。


ワタシたちは顔を見合わせて頷くと、黒の塔に向かって出発した。



数十分後、ワタシ達は黒の塔が崩れた現場にたどり着いた。

真っ黒な瓦礫があちこちに転がっている。
周辺の木は派手に裂けてたり、粉々になってたり、変な形にねじ曲がったりしていて、見たことない異様な光景が広がっていた。

ワタシは何の気なしに、黒の塔の瓦礫に手を触れる。


「っ!」


得体の知れない悪寒を感じて、すぐに引っ込めた。

冷たい。
キリキリと胸の奥が痛むような、いやな感覚がある。
間近で見たのは初めてだけど、黒の塔ってなんて怖い建物なんだろう。
ぞっとする……


「塔には強靱な呪いがかかっていたはず……これまで何度も塔を取り壊そうとしましたが、それができなかったのは呪いのせいです」

「何をしても呪いが破れることはなかったのに……こんなにもバラバラに崩れるとは一体何が……」


「!!大変だ、だ、誰か倒れてます!!」

「!!!」


衛兵が瓦礫の向こうから声をあげた。


人が倒れている……?


嫌な予感がする。
よくわかんないけど、胸騒ぎが収まらない。


声を上げた衛兵のところへ駆け寄ったみんなは、まるで時間が止まったみたいに呆然と立ち尽くしていた。


ワタシもゆっくり近づく。


怖い。怖い。
見たくない。
でも……


そこに倒れていたのは二人。
一人はネイド。

それにも十分驚かされたけど、

いやだ、
いやだ、


いやだいやだいやだ……っ


もう一人はーーーー









ザントは神殿になんか行ってなかった……。
途中で魔物に襲われたわけでもなかった……。

3年間、ずっと黒の塔にいたんだ……。
一人であそこに幽閉されてたんだ……。


誰も知らなかった。
お父様も知らなかった。

ザントが囚われていたこと、
黒の塔が使われていたこと。


誰かが無断で捕らえて、無断で幽閉していた……。


今、その犯人を取り調べて、じっくり話を聞いてるところらしい。



ただハッキリわかってることは……
ザントは禁術の罪で捕まってたってこと。



「ザント殿がミドナ様に禁術を教えていたなんて……」

「それは真か?」

「何を企んでいたのだザント殿は」

「ふん、怪しいとは思っていた」

「あの男は魔術に詳しすぎる」

「悪の道に踏み外すことは想像できたはずだ!」

「おいおいそれは言い過ぎでしょ」

「そ、そうですよ!まだ決まったわけでは……」

「どうかな」

「これが本当なら彼はどうなるでしょうな」


……っ


「あぁミドナ様おいたわしや……」





「ひどい目に合われましたね……」


……ちがう


「ミドナ様も嫌がっていたに違いない」


ちがうちがう


「怖い思いをされたことでしょう」


ちがうちがうちがうちがう!


「酷なことを……」

「なんて男だ」

「許せない」


何でザントを責めるんだ


「ミドナ様」

「大丈夫ですか」

「おかわいそうに」


何でザントを心配しないんだ


「ミドナ様」


あぁ


「ミドナ様」


あああ


「禁術を教えられていたというのは」


ワタシは


「本当ですか?」


ワタシは……


「……ザントに禁術を教えてもらったことは、ないよ」


ざわめきが止まった。


「んと……ワタシもちょっと興味あったから、聞いたことはあるんだ。どういう魔術なのかは教えてもらったけど、ザントに禁術そのものなんか一度も教えてもらってないし、見たことない」


初めて嘘をついた。


でも、とっさにそう言ってしまった。


それしか頭になかった。


ワタシは嘘をついてしまった。


もう何も聞こえない。





「おと……おとうさま……っ」


お父様の部屋で、二人きりで、ワタシはお父様にだけ、本当のことを話した。

本当は禁術を教えてもらってたこと、
でも無理矢理じゃなかったこと、
ワタシも進んで学ぼうとしてたこと、
ワタシが教えてもらってた理由、
ザントが教えてた本当の理由、

言わなきゃいけないことが多すぎて、整理つかなくて、支離滅裂だったと思う。
でもとにかくザントが悪くないことだけは、お父様に伝えたかった。


「ちがうんだ、おどうさま、ザントは、ザントは悪くないんだ、みんなのこと思って、でも、やめようとしたこともあったんだ、何回も、けどワタシが無理言って……っ」


「ごめんなさい、おどうざま、ごめんなざい、ワタシ、どうしよう、どうじよう」


「うっうっ、ザント……ザントォ……っごめんなさい、ごめんなさい、おとうさま、どうしよう、どうしよう、わあああぁ……」


お父様は泣き喚くワタシを抱きしめて、何も言わずに優しく頭をなでてくれた。







大臣達が発表した。
ザントが起きないことにはこれ以上進められない、この話はいったん保留だって。


ザント(と何故か塔にいたネイド)は宮殿の医務室で眠っている。
みんなは、もちろんワタシも、ザントが目を覚ますのを待っていた。

二人とも一応無事らしい。

でもあまりにもひどい状態みたいで、救出から一週間たった今でも気を失ったままだ。
絶対安静、面会謝絶。




ワタシはあと1時間で一つ歳をとる。

いよいよ影送りの日だ……。



日にちが変わった瞬間、誰にも見送られずに出発しなきゃいけないなんて。

なんでそんなコソコソする必要があるんだ。

6年間帰ってこれない決まりといい、どうせ陰険なヤツが考えたんだろうなぁ。


みんなへの挨拶周りも終わった。
あとは時間が来るのを待つだけだ。


……旅立ちまでにはザントも起きると思ってたんだけど……。

どうも、無理そうだ。


習わしは絶対。
ザントを待つことはできない。


だけどワタシはどうしても……
どうしてもザントに会いたかった。


これからワタシは6年間、宮殿に戻ってこれない。

だからせめて……

顔だけでも見ておこうと思って、ワタシは結界を使って姿を隠し、ザントのいる病室に忍び込んだ。


「……」


これだけ遅い時間だ。
当然だけど誰もいない。


部屋はすごく質素でだだっ広かった。

置いてあるのは棚、机、椅子、ベッド……必要最低限のものだけ。
花一つ飾られていない。

面会謝絶じゃ見舞いも来ないだろうから無理ないけど。
寂しい部屋だ。


部屋の奥にあるベッドの周りを灰色のカーテンがぐるりと囲っていて、中で眠る人物を重々しく守っていた。


ザント……


ワタシは恐る恐るカーテンを掴んだ。
何故か手が震える。


ゆっくり、ゆっくり開ける……


「……」


ベッドにはーー当たり前だけどーーザントが眠っていた。

塔で見たときよりだいぶ良くはなってるけど、それでもワタシの記憶にある姿とは遠く離れていた。

顔がやつれて頬がこけて、顔色も悪い。
目元も暗くて何だか別人みたいだった。

こんな……


「ザント……!」


ワタシは思わずザントの手を握った。
ザントの手はすごく冷たかった。
一瞬死んでるんじゃないかと思ったけど、ザントの脈がしっかり伝わってきて、穏やかな鼓動を感じて、少し安心した。


「ザント……」


ザントの静かな寝息が聞こえる。



……ワタシに禁術を教えた事が、ザントの罪……

禁術の罪はザントのものだけじゃないのに。

ワタシだって望んで禁術を学んだし、練習した。

ワタシにだって罪はあるんだ。

ワタシも捕まればよかったのに。

一緒にいてやりたかった。

塔でザントはどんな目に合ったんだろう。

どんなことを思ったんだろう。

苦しい思いをしたんだろうな。

きっと想像できないくらい、ひどい目にあったんだろうな。


心細かっただろうな。


ずっと一人で……。



……

ごめんな

ごめんな、ザント

ワタシ……何にもしてやれなかったよ

オマエはずっと……ずっと戦ってたのに

また一人で……

……


なぁザント

もうオマエを一人で悩ませたくないんだ


だってほら、オマエ、泣くじゃん


オマエの泣き顔なんて見れたもんじゃないからさ

ザントとミドナ


あのな


ずっと思ってたんだぜ、ワタシ


オマエの力になりたいって……


ザントの隣にいたいって


ずっと……そう思ってたんだぜ……



「今もだよ」



ワタシは絡めていた指をほどいた。



「今も思ってるよザント」



そのまま


ワタシは


眠っているザントの瞼に、
そっとキスをした。







もう行かなきゃな……


ワタシは手のひらを開いた。
影の力が集まって、一匹の蝶になる。


黒くて半透明の羽。
かなり上手くできた。
蝶を流れるワタシの魔力が、キラキラ輝いている。


「ワタシは隣に……居られるように頑張るからさ。ちったぁ褒めろよな」


蝶はワタシの手から飛び立ってふわふわ漂った後、ザントの隣にある棚にちょこんととまった。


「じゃ……ザント……またな……」


ワタシは結界で姿を隠し、部屋をこっそり抜け出した。


長い長い、静かな廊下を歩く。

このまま、どこにもたどり着かなければいいのに。

そんな事を思いながら、宮殿を出た。


目を覚ましたザントが追っかけて来ないかな、なんて物語みたいな期待も少なからずあったけど。
そんな上手い話あるわけなくて、ワタシは普通に広場に到着してしまった。


神殿に向かう馬車が来ている。
ワタシが近づくと、先に待っていたニコルが馬車の扉を開けてくれた。


「ミドナ様……」

「ありがとうニコル。行こっか」


心配そうな顔をしたニコルの肩を叩いて、ワタシ達は馬車に乗り込んだ。

馬車はゆっくり動き始める。
東の神殿へ向けて。
長い長い旅の始まりだ。


じゃ……

また6年後、会おうな。

たまにはワタシのこと思い出せよな。

頑張ってくるからさ。

元気でな。
ザント。




ワタシは珍しく、祈りの言葉を頭に浮かべた。



『黄昏の光が君を護りますように。』




ていうね(白目)

書いたもん勝ちです。


◆勝手に出した用語や設定の解説
・ミドナの年齢
現在思春期です。

・影のオーブその3
登場が久々なので補足。
ザントがミドナに教えた禁術の一つです。
ゼルダ無双でザントとミドナが必殺技で使う球体に勝手に名前をつけたものです。
この技がきっかけでこの物語を書くに至りました。

・ニコルその3
登場が久々なので補足。
宮殿に仕える家臣の一人でミドナと一番仲のいい侍女。
ザントのことがほのかに好き。
覚えてなくても問題ありません。

・ナハトその3
登場が久々なので補足。
宮殿に仕える家臣の一人でザントと若干仲良し。
気さくで社交力の高い人。一族では珍しく筋骨たくましいタイプ。
覚えてなくても問題ありません。

・ネイドその3
一応補足。
宮殿に仕える家臣の一人でザントと犬猿の仲。
黒の塔にいるザントにちょっかいを出して巻き込まれた人。
覚えてなくても問題ありません。

・瞼
どうもする場所によって意味があるそうで、
瞼へするのは「憧憬」らしいです。
ミドナがザントに抱く感情です。
瞼にしてるところなんて映画やドラマでも見ませんが、そうらしいです。


映画やドラマでも見ないのでザンミドくださいお願いします(憧憬)


トワイライト・ファントム0

トワイライト・ファントム1 〜黄昏の小さな姫君〜
トワイライト・ファントム2 〜隠者の庭〜
トワイライト・ファントム3 〜聖者〜
トワイライト・ファントム4 〜潜思〜
トワイライト・ファントム5 〜黄昏の哀歌〜
トワイライト・ファントム6 〜忠誠と反故〜
トワイライト・ファントム6.5 〜後ろ影〜

トワイライト・ファントム7 〜影と静寂の中で〜
トワイライト・ファントム8 〜塔と腕輪〜
トワイライト・ファントム9 〜禁戒の呪術〜
トワイライト・ファントム10 〜光〜
トワイライト・ファントム11 〜黒の賢者〜
トワイライト・ファントム12 〜残された者たち〜
トワイライト・ファントム12.5 〜蝶むすび〜※ここです
トワイライト・ファントム13 〜再会〜


◆タグ一覧
/トワイライト・ファントム

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2 Comment

無題

うああああああん(号泣)

前ので「うぉうザントさんいいねぇいい感じにネジ飛んでますねぇ(ゲス顔)」
って感じだったのが今回
「あああミドナ様ザントを救って下さいお願いします隣に居てやって下さいううぅぅ…」
に変わりました。
ミドナが健気過ぎてもう…ザントも変わりすぎうぅ…
そして解説の「覚えてなくても問題ありません」三連続で吹きました。
く、くそうこんなところで…!
次回からザンミドですか、楽しみにしてます!
Re:無題
  • おゆ
  • (2016/03/30 09:32)
読んでくださりありがとうございます!
わあああああん

くりさんは感受性豊かな方だ……そんな風に感じていただけてとても嬉しいです(>_<)
私もミドナにはザントの隣に居てやってほしいと思っております。
ただミドナは常に真っ直ぐザントのことを思い続けているのですが、当のザントが歪み始めているので、なんだか不安です。

>3連続
オリジナルキャラが小出しに出てくる回だったので……w
あくまで物語をスムーズに進めるためのキャラクター陣なので本当に覚えてなくて問題ないのです。明日には忘れてください()

はい!次回からザンミドやり取りをたくさん増やしていきたいと思っております。ようやくって感じです。
私も楽しみにしてます!!!!()

無題

ザンミドォォォォォ‼ 待ってましたー‼
有難うございます!!
最近ですね、ゼルダ無双を舞台とした「ハイラル学園」と言うものをつくって、一人で笑ってたんですが…

それが実際に存在したんです‼
今まで自分なにやってたのんだろう(泣)
一応勝手に設定したものです

ザント→高等部3年。成績は学園トップ
ミドナ→高等部3年。学園一の美魔女

どうでもいい内容でした… 失礼しました…!!
Re:無題
  • おゆ
  • (2016/04/16 22:41)
ザンミドりましたー!!!
とっても書きたかったシーンなので一人胸をなで下ろしております。

ハイラル学園!
ゼルダ無双は各ゲームのメインキャラがたくさんいるので楽しそうですw
ザントの頭いい設定良い〜^w^
ザントなんか生徒会長目指して一人で暴れそうですねw
そんなザントにパン買ってこさせるミドナとか容易に浮かびました()

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