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トワイライト・ファントム5 〜黄昏の哀歌〜

ザントの過去を割と真剣に考えて、
鬼のように捏造した小説っぽい文章の5話目です。
詳しくは、「トワイライト・ファントム0」をご覧ください。

もしご興味があって時間に余裕があればどうぞ。
※なんとなく挿絵を追加しました

◆はじめに
・ザント一人称
・物語はミドナが幼い時代からスタート。
 ザントも若くて、いくらかまとも。
・基本ザンミド意識の展開

◆三行あらすじ
ザントうわの空
ミドナ殴る蹴るの暴行
ザント「話聞いてください」

トワイライト・ファントム5
~黄昏の哀歌~


「はじめに、ミドナ様にお尋ねしたいことがあります」

「何だ?」

私とミドナ様は広場を出て、崖の上に腰を下ろしていた。
影の宮殿の敷地内で、最も隅となる場所。
目の前には黄昏の空だけが広がっていて、影の世界をぼんやりと照らしていた。

「ミドナ様は何故、禁術を学ぶのですか」

「え!何故って…」

隣で足をぶらぶら揺らしていたミドナ様は、きょとんとした顔で私を見た。


…少し酷な質問だろうか。
しかし私は、ミドナ様の答えが聞きたかった。
それがどんな答えであろうと…


「うーん、そうだなぁ…」

ミドナ様は口を歪め、少し唸った。

「かっこいーから」

「かっこいい?」

私はミドナ様の答えを繰り返す。

「色んな魔術使えたらかっこいーだろ?なんかの役に立つかもしれないし」

「なんか、とは?」

「んー、なんかはなんかだよ」

ミドナ様は何とも歯切れの悪い返事をし、ぐぐ、と伸びをすると、

「今は『なんか』じゃないけどな」

と付け足した。

「禁術がどれだけ危ないかはわかってるよ。昔はあれを使ってみんな喧嘩してたんだろ、たくさん傷ついたんだろうな」

「…」


ミドナ様が言っているのは、影の一族の争乱の時代のことだ。
今でこそ平和で穏やかな世の中ではあるが、かつて一族内では頻繁に争いが起きていたという。
先代の王は大いなる力でそれを完全に沈め、長い争いに終止符を打った。
その後平和な世界を作るための政策の一環として、一部の魔術の行使を完全に禁じたのだ。
その一部の魔術というのが、現在の『禁術』。
戦いに使われた、攻撃の為の魔術…


「絶対使わないよ」

ミドナ様は転がっていた小石を空に投げ捨てた。

「だけど『なんか』あった時、禁術が役に立つことがあるかもしれないじゃん。で、使えたらかっこいーだろ?」

「!…」

あぁミドナ様…
あなたという方は…。



「…その通りです」

赤く澄んだ瞳に、私はゆっくりと頷いた。

「禁術には…二通りの使い方があります。禁術は確かに誰かを傷つけますが、誰かを『守る』こともできるのです」

「!」

「ミドナ様は禁術を知ることで『正しい使い方』を考え、 それを使うべきかどうかを選ぶことができるのです」

ミドナ様は腕を組みながらふうんと頷いた。

「よくわかんないけどかっこいーってことだな」

「!そうですね」

私は思わず笑いそうになってしまった。


さぁ。
ここからだ。
上手く伝わるかどうかはわからない。

誰にも話したことがない。
私の中にずっと潜ませていた事実…。

お聞きくださいミドナ様。
私の憂いを。
『影の一族の危機』を。
どうか。


私は頭の中に言葉をうかべ、並び替え、整理した。
それを済ませると深く息を吐いて、おもむろに口を開いた。

「本題です、ミドナ様」

「ん」

「我々影の一族は年々、魔力が減少し続けています」

「え!」

ミドナ様が短く声をあげる。

「それって、誰が?」

「全員です」

「一族全員が?」

「はい」

「どうして…」

「恐らくは、昔ほど魔術を使わなくなったためです」

私は遠くを見るような視線で、自分の考えを確認しながらゆっくりと話した。

「私にはわかるのです。私には他人の魔力を感知する能力があります。減少は非常にゆっくりで、誰も気づいておりません。しかし、確実に低下しています」


これはかなり前から気づいていたことだ。
しかしニコル殿の魔力を間近で感じた時、改めて危機感を持つこととなった。


「それ…他に知ってるヤツいるのか?」

「…いえ。誰も知りません。話したのはミドナ様が初めてです」

「…ふうん」


そう。
誰かに打ち明けるのは初めて…

…いや、昔一度話したことがある。
あなたの魔力が減っていると。


ーー貴様、馬鹿にしているのか!?ーー
ーー侮辱罪で査問会議にかけてやってもいいんだぞ!ーー


ふふ。

話したところで本人に自覚があるはずがないのだ。
私の能力には共有の術がない。
誰が納得する?
誰が本気にする?

言わなかったのではない。
言えなかったのだ。

もう誰にも、何も言うまい。
そう決めたのだ。


「そう…誰も気付いていないのです。我々一族は茹でられたカエルのように、現状に気づかず何もせず…残酷な未来へ向かっているのです」

「茹で…」

妙なところを反復されたが、私は両手の指を組みながら言葉を続ける。

「私は危惧しているのです。数百年後…いえ数十年後かもしれません。影の一族の魔力は底をつきるでしょう。その時、誰が一族を守れるのでしょうか?『なんか』あった時、どうすればよいのでしょうか? 」

ミドナ様の言葉を借りて、私は誰ともなしに問いかける。

降り注ぐかのような静寂…。

際限なく広がっている黄昏の黒雲から目を反らし、私はミドナ様に視線を向けた。
見逃すことのないように、しっかりと。

ミドナ様もまた、まっすぐに私を見ていた。
Zant×Midna ザンミド
ミドナ様の宝石のような大きな瞳には、見慣れた暗い瞳が写っている。
何て圧力めいた、重たい目をしているのだろう。
このようなプレッシャーを与えていいはずがない。
こんなにも幼いというのに。
あまりにも、酷…。

しかし…ここまで来たのだから、言うしかない。

どうか。
お聞きください。
ミドナ様。
それだけでいいのです。


「『なんか』あった その時は……ミドナ様や私のような…強い魔力を持つ者が、『守る』しかないのです」

「…!」

「それが義務だと思っています。だから私は…『守る』方法の選択肢を増やすため…ミドナ様に禁術を教えているのです…」

「…」


義務だと。

笑わせる。
私が勝手に思っているだけだ。
誰にも話したことがない、自分の中で思っているだけのことを『義務』だと。
ミドナ様にそれを課せるのか。
私にそんな権利はない。


ミドナ様は私と目を合わせたまま無表情で押し黙っている。


どんな感情で私のことを見ているのだろう。
あぁダメだ。
やはり言わなければよかった。


ミドナ様の視線に耐えられず、私は逃げるように目を伏せた。


聞いてもらうだけでいいと、そう思っていたはずなのに。
結局身勝手な話に終わってしまった。

一族の魔力はいつか底つきる。
これは間違いない。
だがそれを今、ミドナ様に伝えてどうする?

私はミドナ様に何を話した?
私はミドナ様に何を求めている?

私の中には達成感と罪悪感、充足感と悔恨の情が、渦を巻いている。

言わなければよかった。
だがもう遅い。
ただただ、愚かしい…。


「…ザント」

「!」


ミドナ様がぽつりと呟いた。


怖い。
怖い、怖い、怖い!

話さなければよかった。
これまで通り自分の中に閉じこめておけばよかった。
こんな気持ちになるとは思わなかった。

ミドナ様はどんな感情なのだろう?
笑うだろうか。
怒るだろうか。
哀しむだろうか。
どの感情も、私には矢のように突き刺さることだろう。

どうしようもなく怖い…
心細さに沈んでいく。
胸がざわつく。
ミドナ様は何を話すのだろう…
何を思ったのだろう…

怖い…


ーーしかしミドナ様が後に続けた言葉は、私には到底想像のつくものではなかったーー







「オマエ…エライな…」

「え…」


今、なんて…?


私は顔を上げ、恐る恐るミドナ様に向き直る。

ミドナ様の感情は言うなれば『困惑』。
私の瞳を見ていたが、その視線は次第に底辺を泳ぎ始めた。
眉をひそめて口を開けたまま、次の言葉を探している。


「エライな…」


やはり上手く表現できないのか、ミドナ様は同じ言葉を繰り返した。

エライ?
私が?
エライ…?


ーー貴様、馬鹿にしているのか!?ーー
ーー侮辱罪で査問会議にかけてやってもいいんだぞ!ーー


ひ…
一人で抱えるしかなかった私に…
一人で悩むしかなかった私に…


ーーオマエ、エライなーー


あなたはそのように言ってくださるのですか…?


っ…胸が締め付けられるような、妙な感覚を覚えた。
ひどく心がぐらつく。
何故、


「…色々考えてるんだな、オマエ」


あああ、
苦しい…。
息が詰まる…。
心臓が波打つ…。
や、め…


「…ずっと一人で…」


ああああっ!
おやめください、
もう、何も言わないでください…
やめてください…
やめ…


体の内側が、胸の裏側が、ひどく痛くて、もうわけがわからない、
握りしめた手が震える、うまく呼吸ができない、息ができない、
唇を噛まないと、妙な声が出そうで、息苦しく、とても辛いのに、
不思議な幸福感で満たされていて、
私は目頭を強く押さえる必要があり、そこから滲む何かを、
こぼれ落ちないように、流れ出ないように、
必死に、必死に、押さえつけて



「…偉いな、ザント」



…ア"…

耐えていたのに。
耐えて…いたのに…。

目の前の空が滲んでいく。
歪んでいく。
濡れていく。
溺れていく。

次々に溢れる。
とめどなくこぼれる。
頬をつたう。

「ア"…」

黄昏の空。
霧のような光が落ちてくる。
幼い姫君と嗚咽する男を包み込むように。





「なぁ」

いつもそうだが、長い沈黙を破ったのはミドナ様だった。

「はい」

私は落ち着いた声で、静かに返事をする。

「禁術ってあといくつあるんだ?」

「…私が教えられる禁術は、次で最後です」

私も全てを把握しているわけではないが、知っているのはあと一つだ。

「最後の術は…これまでのものとは比較にならないほど危険で、非情で、恐ろしい魔術…いえ、『呪術』です。やり方は理解していますが、使ったことはありません」

私がそう言うと、ミドナ様は顔を強ばらせた。
そのままごくりと唾を飲み込むと、強い眼差しで私を見つめる。

言わずとも、わかっております。

「…一族を守るためには、使わざるを得ないかもしれません。もちろん使わずに済むかもしれません。その時が来たら、ミドナ様ご自身でお選びください。それだけで充分です」

ミドナ様は頷き、「ん」と一言返事をした。




話してよかった…。

何故だろう。
一族の危機が解決したわけでもないのに。
心がとても楽なのだ。
重い枷が外れたように、軽い。

ミドナ様…


『…偉いな、ザント』




この先何があろうとも

あなたのことは、私がお守りしましょう。


命に代えてでも。



ていうね(白目)
今回長かったですね、ごめんなさい(↑w↑)

◆勝手に出した用語や設定の解説
・ザントと魔力感知能力
ザントは生まれながら他人の魔力を感知する能力を持っているという設定。
特徴のある魔力や何度も感知している魔力であれば、その持ち主を特定することができます。
この能力によって失踪するミドナを簡単に見つけることができたり、ニコルの魔力の低さを知ることができました。
しかしあくまでザントの中の感覚のため人と共有することができず、『影の一族の危機』を一人で抱え込むしかありませんでした。
魔力を感知する能力はザントにしか備わってないのかというと、そうではないかもしれませんが、抜きん出てると思っていただければ良いかなと思います。
少なくともゼルダ無双では「聖なる力を感じます」とか言っているので、そういう能力がなくはないと思います。多分。

・影の一族の危機
影の一族の魔力が年々低下してきていることです。
現在ザントだけが察しています。
争いの時代が終わり、魔力を使う機会が少なくなったことが原因とザントは分析しています。
ザントはこれを避けられないものと判断し、魔力の低い者たちはザントやミドナのような魔力の高い者が守るべきだと考え、これを義務だと思っているようです。
ミドナに禁術を教えるのは、一族を守るための術を増やすためでした。

・禁術その2
禁術は影の世界で良しとされていない魔術で、
人を傷つけるものは全てこれに当たります。
かつて影の世界で起こっていた争乱を沈めた王が、平和のためにこれらの魔術を全て禁じたのが始まり。
ザントは禁術を使って何か悪いことをしようとしているわけではなく、
ましてやミドナをダークサイドに落とそうとしているわけでもありません。
ザントは禁術を『守る』ための術の一つと捉えています。


少し、ひと段落ついた感じです。
「すべては何もせず、影の世界に甘んずる愚かな王家のせい」
というザントの(捻りながら言う)セリフがありますが、
恐らくザントは現在の平和で穏やかな影の世界(平和そのものに対してではなく、平和ぼけした世の中)に対して何かしら疑問や問題を感じていたのだと思います。
王は問題に気づいていない、自分の方が頑張ってる → 私が王になって何とかしなければ!世の中をがえだいっ
という思考が働いて、野心を燃やしていたのではないかと思いました。

ザントだけが気づいていて、ザントだけが何とかしようと動いている…。
そういう状況。

その辺りのことを考えて、ザントの抱く影の世界の問題点というのを、平和すぎることによる『一族の魔力の低下』としました。

ただ、王家に対して愚かだと感じたり、一族を怒りや憎悪、欲望を持たないふぬけた者と思うのはまた別の理由があると思っています。


長々と失礼いたしました。
これらはあくまで全て個人の解釈と考察によるもので、自分でも絶対これでないとダメという風には考えておりません。
むしろ色んな方のザントの解釈だとか、思いの丈を聞くのが大好きです。
なので皆さんもザントのことやザンミドのことを描いたり聞かせてくださいね(後生だから)

世の中を…ウッ…ガエダイ!
魔力の低下はぁ…グズッ…
宮殿のみンドゥッハッハッハッハアアァァ
宮殿のみンゥッハー宮殿のみならずぅー!
オウケノ…一族の問題やないですかぁ…
命がけでッヘッヘエエェエェエエイ↑ア゛ァアン!!
アダダニハワカラナイデショウネェ…


トワイライト・ファントム0
トワイライト・ファントム1 〜黄昏の小さな姫君〜
トワイライト・ファントム2 〜隠者の庭〜
トワイライト・ファントム3 〜聖者〜
トワイライト・ファントム4 〜潜思〜
トワイライト・ファントム5 〜黄昏の哀歌〜※ここです
トワイライト・ファントム6 〜忠誠と反故〜
トワイライト・ファントム6.5 〜後ろ影〜

トワイライト・ファントム7 〜影と静寂の中で〜
トワイライト・ファントム8 〜塔と腕輪〜
トワイライト・ファントム9 〜禁戒の呪術〜
トワイライト・ファントム10 〜光〜
トワイライト・ファントム11 〜黒の賢者〜
トワイライト・ファントム12 〜残された者たち〜
トワイライト・ファントム12.5
トワイライト・ファントム13 〜再会〜


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/トワイライト・ファントム

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1 Comment

無題

ここ一番好き!
やっぱりザントはミドナを慕っていたのかな。
Re:無題
  • おゆ
  • (2015/11/15 02:46)
コメントありがとうございます〜!
黄昏の哀歌は私もお気に入りのパートです。
ザントが家臣だった時、ミドナとどんな感じだったのか
ゲームでの描写が少ない分想像するのは楽しいです。
慕っていたものと思いたいですが、そうなると未来の結末はより悲惨です。。。

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